生活再発見

三井の晩鐘・大津市園城寺町

三井の晩鐘・大津市園城寺町

基本情報
名称 三井の晩鐘
URL http://www.shiga-miidera.or.jp/serialization/travel/105.htm
文化財指定等 鐘楼は国指定重要文化財
鐘は県指定文化財
所在地 三井寺境内(大津市園城寺246)
電話番号 077-522-2238(三井寺)
営業時間 8時~17時
定休日等 無休
料金 無料(三井寺境内の拝観料500円、鐘つき1回300円)
※平成22年11月現在

~境内に響き渡る、こころ安らぐ鐘の音~

鐘の上部には108の煩悩に合わせて、108個の「乳」と呼ばれる突起が付いている

 歌川広重(安藤広重)の浮世絵風景画の傑作、「近江八景」に描かれた「三井の晩鐘」は、滋賀県民でその名を知らぬ者はないであろう有名な梵鐘だ。「姿(形)の平等院」、「銘の神護寺」、「声(音)の園城寺(三井寺)」と昔からいわれ、「天下の三名鐘」(日本三名鐘)のひとつにも数えられている。現在、「天下の三名鐘」のうち、今も昔も変わらぬ鐘の音を聞くことができるのは、この「三井の晩鐘」のみ。鐘がつるされている桃山様式の鐘楼は国の重要文化財に、鐘本体も県の文化財に指定されている滋賀県が誇る宝物だ。この鐘は、慶長7年(1602年)に、現在、境内の一角に安置されている「弁慶の引き摺り鐘」(奈良時代作)の跡継ぎとして造られたもので、その重さはおよそ2250kg、高さは2mを越える。豊臣家による三井寺の再興に際し、当時、三井寺の長吏であった道澄の発願によって鋳造されたという。

国の重要文化財に指定されている鐘楼は桃山時代の建築

 除夜の鐘でも有名な「三井の晩鐘」には、琵琶湖の主である大蛇にまつわる伝説が残っている。ある漁師の若者が琵琶湖のほとりで子供たちにいじめられている蛇を助けた。その晩、若者のもとに一人の娘が現れ、若者の家に宿をとることになった。その後娘はそのまま居着いてしまい、やがて二人は夫婦となって子供を授かる。妻は「絶対にのぞかないで」と言い残して産小屋に籠もるのだが、心配になった若者が小屋の中をのぞきこんでしまう。すると、なんとそこにはとぐろを巻いた大蛇が赤子を取り巻いていた。若者は声を上げて驚いたが、見間違いではないかと再び部屋の中を見直すと、すでに大蛇の姿はなく、妻もおらず、手に玉を握り締めた赤子がいるだけだった。
 残された赤子は母を恋しがって泣き叫ぶことも多かったが、玉をなめるとすぐに泣き止み、健やかに成長していった。ところがこの噂を聞いた領主が「その不思議な玉を献上せよ」と言い出したので、若者は困り果ててしまった。湖畔に行き、姿を消した妻に祈るように訴えていると大蛇が現れ、「私はあなたに助けていただいた蛇で、あの子に渡した玉は私の目玉です。のこったもう一方の目玉もわが子のためなら喜んで差し上げましょう。ですが私は盲目になってしまうので月日がたつのを毎日三井寺の鐘の音で知らせてください。そして、歳の暮れにはたくさん鐘を撞いて、年が過ぎ行くのを教えてください。お返しにその人たちに幸運を授けます」と懇願したという伝説だ。
この伝説にちなんで、三井寺の除夜の鐘では、蛇神を慰めるために灯明を献じ、大蛇の目玉を模した目玉餅を供えるという。しかも撞けば撞くほど福があるとされ、108回とはかぎらずにできるだけ多くの人に除夜の鐘を撞いてもらうようにしているそうだ。
 一方、国の重要文化財にも指定されている鐘楼は、桁行二間(約3.6m)、梁間一間(約1.8m)、一重の切妻造りの檜皮葺で、四本柱の一般の鐘楼とは違う独特の様式をもつ。桃山時代の建築とされるだけあって、重厚感のあるその優美な姿が印象的だ。
 毎夕、美しい音色を大津の街と湖上に響かせる三井寺の鐘。奥深い安らぎを与えてくれるこの鐘の音は、平成8年、環境庁の「残したい日本の音風景百選」にも選ばれている。これからもずっと、人々のこころに響き続けることだろう。
(取材日:平成22年5月)

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