歴史再発見

善水寺本堂・湖南市岩根

善水寺本堂・湖南市岩根

基本情報
名称 善水寺
URL http://www.zensuiji.jp/
文化財指定等 【国宝】
「本堂」
【国指定重要文化財】
「木造薬師如来坐像」「木造梵天・帝釈天立像」(2躯)「木造四天王立像」(4躯)
「木造不動明王坐像」「木造兜跋毘沙門天立像」「木造僧形文殊坐像」
「木造金剛二力士立像」(2躯)「木造持国天・増長天立像」(2躯)「金銅誕生釈迦仏立像」
所在地 湖南市岩根3518
電話番号 0748-72-3730
拝観時間 9:00~17:00(12月から2月は9:00~16:00)
定休日等 無休
拝観料 500円
※平成23年1月現在

~病気平癒の不思議な水が湧く 湖南三山・善水寺~

宮殿のような趣をもつ本堂は荘厳な美しさを感じさせる

 岩根山の中腹、山に抱かれるようにして建つ天台宗の寺「善水寺」。国宝に指定された本堂には、平安時代の正暦4年(993年)に作られたという秘仏の本尊・薬師如来座像をはじめ、梵天立像・帝釈天立像、四天王、不動明王座像、兜跋毘沙門天立像、僧形文殊座像、金剛力士像、持国天・増長天立像、金銅誕生釈迦仏立像など、多数の重要文化財指定の仏像が並ぶ。平成17年からは、湖南三山の特別拝観の企画を毎年11月に実施。国宝に指定された本堂を持つ天台宗の古刹で、秋に美しい紅葉が楽しめるという共通点を持つ湖南市の三寺「長寿寺」「常楽寺」「善水寺」を「湖南三山」と称して三寺合同の特別拝観を行い、県内外からの注目を集めている。

 

典型的ともいえる、天台密教仏堂の形式をもつ本堂。再建には7年の月日がかかったという

 善水寺の縁起は、奈良時代中期、和銅年間(708~714年)、国家鎮護の道場として建立されたのがはじまり。創建時は「和銅寺」と称していたという。現在の寺名に改められたのは平安時代の初めのこと。最澄上人が不思議な力に導かれて「百伝の池」という池を発見した。池の中から、金の薬師仏が見つかったとされている。「百伝の池」には偉大な霊験があるとされ、桓武天皇が病気になられた際、最澄上人が法力によって病気平癒の祈祷を行った霊水を献上したところ、たちどころに回復した。この縁によって「岩根山善水寺」の寺号を賜わったといわれている。病気平癒を成し遂げた霊水は「医王善逝の御香水(いおうぜんぜいのおこうずい)」と呼ばれている。医王とは薬師、善逝とは如来の意味がある。また「善水」とは百伝池の水を元水として、本尊薬師如来の宝前にて医王善逝の秘法にて祈願した水のことを指している。現在は百伝池の東側に井戸水「善水元水」があり、上質な水を求め、たくさんの人が訪れているという。

本堂内に安置された仏像群。本尊・薬師如来座像は胎内より正暦4年(993年)の願文と籾が見出されたことから年代が判明。銘文のある仏像では県下で最古。

 昭和29年、国宝に指定された本堂は、室町時代前期に再建されたもの。桁行七間、梁間五間、木造入母屋造桧皮葺で、正面に向拝(本屋から張り出して庇を設けた部分)を持たないため美しい屋根の曲線が楽しめる建物だ。比叡山を焼き討ちした織田信長の手が善水寺にも迫り、本堂や塔など4棟以外は焼失してしまった(現存するのは本堂のみ)。火災の中、僧侶たちが命がけで本堂に仏像を運びこんだおかげで、現在も多数の仏像が残っている貴重な建物だ。 

境内にわく善水元水。百伝の池の南側に地下50メートル程の井戸を掘り、汲み上げている

 梅中尭弘住職は「日本の宝である歴史や寺仏を受け継ぎ、守って次世代に伝えていきたい」と話す。歴史というものは欠けてはいけないものであり、一日一日の積み重ねでもある。その歴史を次の世代にどう伝えればいいのかに苦心しているのだという。祈願寺である善水寺は「天下泰平」「風雨順次」「百穀成熟」「万民豊楽」の人類に共通の4つを祈願している。梅中住職は「4つの祈願は、人間らしい生活を送るために欠かせない願いでもあります」という。はるかな昔から、人々の願いはそう激しくは変化していない。平和や豊穣を願い、豊かで、暮らしを楽しめることが今も昔も人民の幸せにつながるのだ。「善水寺を訪れ、信仰の力や仏の教えというものに触れ、心静かに人類に共通の祈願成就を望む時間を持っていただきたいですね」と住職は話した。
(取材日:平成22年11月17日)
 

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