歴史再発見

大池寺蓬莱庭園・甲賀市水口

大池寺蓬莱庭園・甲賀市水口

基本情報
名称 大池寺蓬莱庭園
URL http://www.sunalix.co.jp/daichiji/
文化財指定等 甲賀市指定名勝
所在地 甲賀市水口町名坂1168
電話番号 0748-62-0396
庭園拝観期間 4月15日~7月15日及び9月15日~12月15日
拝観時間 9時~17時(冬季は~16時)
料金 大人400円、中学生300円、小学生200円
※平成22年10月現在

~滋賀県下では類まれな枯山水庭園の様式美~

小堀遠州の作庭を証明する明らかな文献などはないそうだが、将軍上洛の際の宿泊施設として築かれた近くの水口城の築城に遠州が関わっていた。その落成祝いに遠州が設けたというのがこの蓬莱庭園だったと寺では言い伝えられてきた。

小堀遠州の作庭を証明する明らかな文献などはないそうだが、将軍上洛の際の宿泊施設として築かれた近くの水口城の築城に遠州が関わっていた。その落成祝いに遠州が設けたというのがこの蓬莱庭園だったと寺では言い伝えられてきた。

 甲賀市水口町名坂にある大池寺は、奈良時代の名僧、行基によって創建された古刹。境内には、美しいさつきの刈り込みで名高い鑑賞式枯山水庭園、「蓬莱庭園」がある。春夏秋冬、季節ごとにさまざまな表情を見せるこの庭園は、大海原に浮かぶ宝船を模したさつきの刈り込みと、背後の山の木々とが織り成す迫力ある美しさが魅力だ。いかにも禅寺の庭園らしい白州に映える優美なさつきの刈り込みが、訪れる者の心をひきつけてやまない。

庫裏の庭の大松は名木になっている「臥龍の松」。樹齢は350年で、幹の高さ1.8メートルほどのところで、折れて地を這うように伸びている。龍が伏せたかのようになっているので、「臥龍の松」という。

庫裏の庭の大松は名木になっている「臥龍の松」。樹齢は350年で、幹の高さ1.8メートルほどのところで、折れて地を這うように伸びている。龍が伏せたかのようになっているので、「臥龍の松」という。

 蓬莱庭園は、安土桃山時代から江戸時代初頭にかけて活躍した、茶人であり作庭家でもあった小堀遠州による作庭といわれ、その頃から変わらぬたたずまいが歴代の住職によって守り伝えられてきた。400年近くもの間、絶え間なく続けられてきた入念な庭の手入れのことに思いを馳せると、いっそう庭園の美しさが感じられてくるに違いない。
 大池寺は、もともとは「青蓮寺」と呼ばれ、比叡山に延暦寺が興って以降は天台宗の寺院として栄え、鎌倉時代には禅宗寺院となった。戦国時代、織田信長による叡山焼き討ちの際には、不幸にも兵火に見舞われ、寺内の堂宇はことごとく焼き尽くされてしまう。それでも、ご本尊として安置されていた、行基がひと彫りするたびに三拝したとされる「一刀三礼の釈迦丈六坐像」は焼けずに残った。いまも尊く神々しいお姿のお釈迦様を拝むことができるというのは、まさに歴史の妙といえる。清水寿晴現住職によると、坐像が焼けずに済んだのは、寺が兵火に包まれる前に解体され、どこかに匿われていた可能性が高いからだという。

本堂と庫裏の間の庭にある「佛母井」(ぶつもせい)という井戸。蓬莱庭園だけでなく、大池寺は庭の中に堂宇が建っているという感じだ。

本堂と庫裏の間の庭にある「佛母井」(ぶつもせい)という井戸。蓬莱庭園だけでなく、大池寺は庭の中に堂宇が建っているという感じだ。

 江戸時代の寛文7年(1667年)、禅僧、丈巌慈航がこの地を訪れた際、荒れた境内の草庵にあった仏像を見て心を揺さぶられ、寺の再興のために力を尽くそうと奮い立ち、無住であった同寺に住み込む決断をしたという。このときに、寺号を「青蓮寺」から「龍護山大池寺」へと改めた。「大池寺」という名前が付けられたのは、寺の周囲に行基が造った水利のための4つの池「心字の池」があったためといわれる。後水尾天皇や信長の甥にあたる織田主水正信らの多額の寄進によって、寛文10年(1670年)、仏殿と庫裡が復興された。寺紋は、このときの縁で織田家と同じ木瓜紋になっている。

大胆なさつき一式の刈り込みと枯山水様式が融合した蓬莱庭園は、名庭が数多いといわれる滋賀県内でも稀な一例。

大胆なさつき一式の刈り込みと枯山水様式が融合した蓬莱庭園は、名庭が数多いといわれる滋賀県内でも稀な一例。

 蓬莱庭園は鑑賞式枯山水の名庭であり、庭園奥の大胆に刈り込まれたさつきは、大海の大波小波を表し、砂紋の白州は水面を、中央の大刈り込みは宝船が大海原に浮かんでいる様を表現しているとされる。この様子が蓬莱山に似ていることから蓬莱庭園と名付けられたという。さらに、宝船のなかの7つの小さな刈り込みは「七宝」を意味し、その下にある7つの石は「七福神」を象徴しているそうだ。書院から見て右手前には刈り込みの亀島があり、中央には礼拝石が配されている。

行基作といわれる「一刀三礼の釈迦丈六坐像」。

行基作といわれる「一刀三礼の釈迦丈六坐像」。

 ちょうど取材に訪れた日はあいにくの雨だったが、さつきの刈り込みの緑の間に鮮やかなピンクの花が咲き誇っていた。つやのあるさつきの葉の緑と花弁のピンク、そして白州の白とが織り成す鮮明なコントラスト。数日後には刈り込みを行うとのことで、さつきの花の見納めとなった。平成22年は天候不順でさつきの花は少し遅くまで見られたというが、通常は5月下旬から6月中旬にかけてが見ごろだそう。
 夏は刈り込みの深緑と木々の濃影がくっきりと、秋には背後のもみじが紅葉し、白、緑、赤の彩り鮮やかな対照が目に映る。冬、さつきの葉は暗紫色になり、ときに雪化粧をした様子に誰もがため息を漏らす。
 四季折々の幽玄美が400年近くもの間、絶え間なく繰り返されてきた大池寺蓬莱庭園。昔も今も変わらぬ名庭の美が、未来永劫、守り伝えられていくことを願わずにはいられない。
(取材日:平成22年6月)

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