諸々 再発見

針江のカバタ・高島市針江地区

針江のカバタ・高島市針江地区

基本情報
名称 針江生水の郷
URL http://www.hariekabata.com
文化財指定等 平成20年「平成の名水百選」選定平成21年度近江水の宝選定
所在地 高島市新旭町針江
電話番号 0740-25-6566(針江生水の郷委員会事務局)
営業時間 9時~16時
定休日等 年末年始、地域のお祭り行事などによる休みあり
※詳しくは針江生水の郷委員会事務局までご確認ください
料金 見学コース1名1000円より(完全予約制)
※詳しくは針江生水の郷委員会事務局までご確認ください
※平成22年12月現在

~美しい水を守る針江の生水・カバタのある暮らし~

針江の暮らしは自然と人間が寄り添うことの意義を、圧倒的な説得力で教えてくれる

 高島市針江地区を流れる美しい湧き水。集落の中を透明な水で満ちた水路が巡り、小魚や鯉が元気に泳ぎ回る。針江地区の人々は、地域の清冽な湧き水を「生水(しょうず)」、水路やその水を生活用水に利用するシステムを「カバタ(川端)」と呼び、昔から大切に利用してきた。水の恵みをありがたく享受し、自然と共生する生活が国内外から注目され、見学者が多く訪れるようになっている。「針江の生水」は、平成20年(2008年)、環境省「平成の名水百選」に選定された。

今も生活に密接しているカバタ。壷池にはナスが浮かび、端池には大きなコイが何匹も泳いでいる

 地中に打ち込んだ鉄管(元池)から湧き出る生水は壺池に溜められて、飲み水としてだけでなく野菜や穀物などの食材を洗ったり、果物を冷やしたりする生活用水として利用される。使用された水は端池に入り、針江地区を流れる水路から引き入れられた水と一緒になって再び水路へと戻っていく。カバタの多くが水路でつながっているため端池には鯉を飼い、野菜などの食材や食器を洗った時に端池に流れ込む野菜屑や飯粒を食べさせることで水を汚さないようにするなど、先人から受け継いだ知恵や工夫が息づいている。

これは「外カバタ」と呼ばれる、独立した形式のカバタ。元池の鉄管からの湧き水が壷池へ流れている

 人々は、川上の人を信頼し川下の人を思いやりながら、「きれいな水を琵琶湖に戻す」との思いで、今もカバタを使い、守っているのだ。針江の人々にとって、水をきれいに使い、琵琶湖に戻すことは特別なことではなく、毎日の生活の中に組み込まれているごく自然の行為なのだ。針江生水の郷委員会の山川悟会長は「針江の人間にとっては当たり前すぎることだったので、外部から指摘されるまで気付くこともなかった」と話す。一日、一日がカバタと共にあり、カバタのない生活は考えられないというほど、カバタは人々の精神にも深く寄り添っている。

NHKのドキュメンタリー番組「映像詩 里山~命めぐる水辺」でクローズアップされた、地元漁師の船着場

 針江の人々にとってカバタは一種の聖域でもあり、「水の神様」から水をいただいていると考えて、365日こんこんと湧き出る水に敬意を払う。カバタや生水は集落の人々の喜怒哀楽を見守り、共に分かち合う身近な存在であると同時に、暮らしの根幹をなす神聖なものなのだ。集落から流れ出た水は水田を潤し、その多くは針江大川に集まり琵琶湖へと流れていく。水路は定期的に水草や泥を取り除くことで水質を保ち、この美しい水や穏やかな環境は、魚類の産卵場所、生き物のゆりかごとなっている。

極めて透明度の高い水路の水と、そこに澄む生き物の多さに、言葉を失うほど圧倒されてしまった

 

 自然から水をいただき、また自然に帰すという生活は、以前は県内のどこにでもあった光景だが、年月が経ち、開発が進むと共に少なくなってしまった。針江に今も残る環境は、自然の恵みではあるものの、そこに暮らす人々の努力の上に成り立っていることも忘れてはならない。日常生活において水を汚さないだけでなく、湖岸の葦刈り、川に繁茂する水草の除去や周辺の竹やぶの伐採といった環境整備にはたくさんの人の手がかけられている。

 針江で暮らす人々の生活や、カバタのある暮らしは針江生水の郷委員会に事前申し込みすることによって見学できる。地元の人々の生活を守るためにも、必ず予約の上でガイドとともに見学してほしいとのこと。「人と人、人と自然のつながりを見つめなおし、自然との共存について考えてもらいたい」というのが、針江の人々の願いでもある。
(取材日:平成22年10月19日)

 

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