諸々 再発見

安曇川やな漁・高島市安曇川町~その3

安曇川やな漁・高島市安曇川町~その3

基本情報
名称 安曇川やな漁
URL
文化財指定等 平成18年水産庁選「未来に残したい漁業漁村の歴史文化財産百選」
所在地 高島市安曇川町北船木 安曇川南流
電話番号 0740-34-0005(北船木漁業協同組合)
期間 3月上旬~7月末。漁期は24時間体制
定休日等
料金 見学無料
※平成22年11月現在
元気いっぱいに飛び跳ねるアユ。個人で買いに来る人も多いとか。

元気いっぱいに飛び跳ねるアユ。個人で買いに来る人も多いとか。

【その2からの続き】
 いまでこそ歴史ある伝統漁法ということで注目を浴びる存在となった安曇川のやな漁だが、木村さんによれば、昭和の一時期、漁法の変化で漁師たちもやな漁に関心を示さず、産業構造の変化による漁師の担い手減もあって、やな漁が風前の灯になったこともあったという。それでも故・永田平兵衛さんという漁師が、ただひとり歴史ある漁法を守り続けていたそうだ。その後、北船木のほかの漁師たちにも伝統あるやな漁を続けることがどんなに価値があることかという認識が広がり、いまでは20数名の漁師がやな漁に関わっている。やな漁の現場で出会った漁師たちは、にぎやかな歓談を交えながら楽しそうに仕事をしていた。その光景を見ると伝統のやな漁の将来も安泰のように思えるのだが、それでも漁師たちには深い憂慮があるのだという。
「北船木は限界集落で、高島市で1、2を争うほどの高齢化率になってしまった。60歳以上が6割を超えているし、集落には若い人がいない。漁師でも専業漁師はたったのひとりだけ」と木村さんは言う。実際、現在やな漁に関わっている漁師全員が50代以上と聞けば、今後のやなの存続について深刻にならざる得ないことも察しがつく。昔は、北船木集落にある若宮神社で年3回ほどの安曇川の漁に関する年中行事が行われていたそうだが、いまは1月17日に一度行事が行われるだけになってしまったという話を聞いても、今後のことが気にかかる。
 さらに木村さんは続けて言う。「最近は食事の欧米化で、若い人は琵琶湖の魚を食べなくなったため魚を獲っても売る先があまりない」と。確かに、欧米化とも肉食化ともとれる昨今の食卓事情の変化に加え、食品を巡る流通の変化で滋賀県にいても新鮮な海産物が味わえるようになったため、湖魚を口にする機会が少なくなったことは確かだろう。取材の際にもアユに交じって大量のハスが獲れていたが、需要がまったくといってないという。「塩焼きで食べるとほんまはおいしいんやけど…」と木村さんは言うが……
 琵琶湖の環境問題から後継者問題、そして県民の湖魚離れ。どれをとっても一筋縄ではいかない重たい課題だが、安曇川のやな漁について何も明るい兆しがまったくないわけではない。

北船木漁協のそばにある出荷用のアユを入れた生け簀

北船木漁協のそばにある出荷用のアユを入れた生け簀

 千年もの間続けられてきた安曇川のやな漁は、平成18年、水産庁により「未来に残したい漁業漁村の歴史文化財産百選」に選定され、人々の注目を集めるようになってきた。ときには、大阪や神戸からこのやな漁をひと目見ようとやってくる人もいるという。このように伝統漁法に対する関心が高まっていくなかで、地元の人々、特に若い人が誇りをもって安曇川のやな漁を将来につむいでいくことができるとしたらどんなに素晴らしいことだろう。
 やな漁では、アユ、ウグイ、ハス、オイカワ、ミゴイ(ニゴイ)、ウナギ、ビワマスなど、さまざまな“顔”がお目見えする。それぞれの魚には、それぞれに合った料理の仕方がある。地元ではアユを塩茹でして一夜干しにした「干しあゆ」が人気。ウグイは煮付け、おつくり、ウグイ寿司(熟れ寿司)、ハスは熟れ寿司、塩焼き、煮付けなどが食べ方としておすすめだそうだ。
「昔は、四つ手網で獲れた子持ちアユを干しアユにしてしょうゆをたらしてよく食べたよ。子どものころは、むしろに干してあるアユをちょっと失敬して…」と子どものころのことを懐かしむ。琵琶湖の魚または魚料理のなかで何が一番ですかとの問いには「やっぱり、そりゃビワマスやろ。2番目は冬の仔アユ『氷魚』(ひうお)、ニゴロブナの味噌汁もうまいよ」とニッコリ。
 穏やかな時間が流れてゆく安曇川河口部にあるやな場の風景。ここでは、いまも昔も変わらぬ安曇川の漁師たちの営みを垣間見ることができる。
(取材日:平成22年6月)
その1 その2 その3

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