生活再発見

坂本門前町・大津市坂本

坂本門前町・大津市坂本

基本情報
名称 坂本門前町
URL http://www.turuya.jp/sakamoto/
文化財指定等 【国宝】日吉大社東本宮本殿・西本宮本殿、【重要文化財】日吉大社東本宮楼門・西本宮楼門など、日吉大社末社東照宮など【滋賀県指定有形文化財】延暦寺慈眼堂【重要伝統的建造物群保存地区】
所在地 大津市坂本6-1-13(坂本観光案内所)
電話番号 077-578-6565(坂本観光案内所)
営業時間 9:00~17:00(坂本観光案内所)、それ以外はそれぞれの施設によって異なる
定休日等 12月29日~1月3日以外は無休(坂本観光案内所)、それ以外はそれぞれの施設によって異なる
料金 日吉大社300円など施設によって異なる
※平成24年4月現在

大津市坂本の町並み。里坊やふるい民家などが立ち並ぶ。

 大津市坂本は、比叡山延暦寺、日吉大社の門前町として栄えてきた。延暦寺の僧侶の隠居坊である里坊をはじめ、今も町のあちこちに貴重な建造物や史跡、文化財が多く残されている。この里坊群を中心とした28.7ヘクタールの坂本一帯は、国の「重要伝統的建造物群保存地区」に選定されている。坂本の町は織田信長の比叡山焼き討ちの際に多くが焼失したが、徳川家康の側近である天台宗の僧・慈眼(じげん)大師(天海僧正)が延暦寺の復興に関わり、坂本の町づくりにも着手したと言われている。

大津市坂本は比叡山延暦寺、日吉大社の門前町として栄えてきた。

 町のいたるところに清流が流れる水路がある。水源をたどっていくと、日吉大社の奥にたどりついた。東本宮の奥にある大行事水だ。大行事とは日吉大社内にある社のひとつ、大物忌神社の旧称。この水が境内をめぐり、坂本の町の水路へと流れていく。まさに神の水と言ってもいいだろう。他にも藤ノ木川や権現川、大宮川など比叡山を水源とする水が、日吉大社周辺から坂本を流れ、琵琶湖に注いでいる。 日吉大社は全国3800余の日吉・日枝・山王神社の総本宮で、平安時代には都の表鬼門に当たることから都の魔除けの神社として親しまれてきた。また魔除けの象徴として「神猿(まさる)」と呼ばれる猿が祀られ、「魔が去る」「何よりも勝る」と言われ大切にされている。春には湖国三大祭のひとつ「山王祭」が開催される。1200年以上の歴史を持つ祭りで、坂本に春を告げる神事だ。秋には境内にある約3000本のもみじが色づき、多くの参拝者の目を楽しませている。境内には大宮川が流れ、大宮橋、走井橋、二宮橋と呼ばれる花崗(かこう)岩でできた日吉三橋がかかっている。中でも二宮橋は豊臣秀吉が寄進したと伝えられる日本最古の石橋だという。
日吉大社から南に300メートルほど歩くと、日吉東照宮がある。慈眼大師が建立したもので、権現造りは日光東照宮のモデルになった。坂本には慈眼大師の廟所である慈眼堂など、ゆかりの史跡が多い。

町のいたるところで水路が巡っている。

 一方、日吉大社の参道には、多くの里坊が並ぶ。比叡山で厳しい修行をした僧侶が、天台座主の許しを得て住む坊で現在50余りの里坊がある。里坊には立派な桃山様式の庭園を持つものが多い。中でも大宮川を引き込んだ曲水や築山などを配した旧竹林院の庭園や、約2万平方メートルの広い敷地内に権現川の水を取り入れた小堀遠州作の滋賀院門跡の庭園、律院の庭園など坂本里坊の10カ所の庭園は国の名勝庭園に指定されている。坂本の地形が変化に富み川の水を利用しやすいことなどが、庭作りに適しているからだという。旧竹林院や滋賀院門跡は公開されているものの、それ以外の里坊は普段は非公開。春には一部が一般に公開される。

「穴太衆積み」と呼ばれる石積みが町の景観を形づくっている。

 坂本観光協会の石川寿夫事務局長に、坂本の町についてお話をうかがった。「平安時代末期には比叡山には6000を超す坊があり、多くの僧侶が修行をしていました。延暦寺を支える台所を預かっていたのが坂本で、大変活気にあふれていました。室町時代には、坂本には2~3000軒の家が立ち並び1万人から1万5千人を超す人が住んでいたと言われています。中でも里坊には歴史的・芸術的な価値が高い庭園がたくさんあります。ただ、実際に今も隠居された僧侶がお住まいです。その人達の生活を守るためにも、期間限定で公開をしています。」とのこと。貴重な見学の機会には、苔を傷めないなどの配慮をしたい。
 坂本の町を歩くと、石垣が多いことに気づく。これは穴太(あのう)衆積みと呼ばれるもので、加工しない自然のままの石を積み上げている。穴太衆は坂本の近くにある穴太地区の石工の集団で、安土城や彦根城、名古屋城など各地の城の石垣を手掛けた。坂本の里坊や古い民家の石塀にも穴太衆積みが多くみられ、町並みの美しさを引き立てている。滋賀院門跡の御成門の両側に続く石垣は坂本一と呼ばれる。一般の民家にも穴太衆積みの石垣が取り入れられて、町全体の美しい景観を作り出している。

多くの里坊が残っており、春には普段公開されないところも一部公開される。

 日吉大社の参道には、水路に沿って桜やカエデ、松などの並木がつらなっている。町中には石垣と門、生け垣、土塀、竹を組んだ金閣寺垣などが混在し、古い町並みを残している。生源寺から西に向かう道路は「作り道」と言われる。造り酒屋や菓子屋、醤油屋などを製造する店が多かったのが、その由来だそう。門前町として参拝客相手の店も多かったことだろう。
 石川さんは、「坂本は大津市の中でも昔ながらの町並みが残っているところです。ゆっくり散策して、穴太衆積みの石垣や庭園などを楽しんでください。細い水路ですが、きれいな水が流れています。そんなところにも目を留めてもらえるとうれしいですね。」と話す。紅葉の時期には「紅葉の坂本・石積みの里めぐり」と名づけてライトアップも実施される。これからも坂本は、四季折々の顔を見せてくれるだろう。
(取材日:2012年4月16日)

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