歴史再発見

常楽寺本堂と三重塔・湖南市西寺

常楽寺本堂と三重塔・湖南市西寺

基本情報
名称 常楽寺
URL http://www.eonet.ne.jp/~jo-rakuji/
文化財指定等 【国宝】
「本堂」「三重塔」
【国指定重要文化財】
「絹本著色浄土曼荼羅図」「絹本著色仏涅槃図」「木造釈迦如来坐像」
「木造二十八部衆立像(現存26躯)」「木造千手観音坐像」「錫杖」
「金銅飲食器(こんどうおんじきき)」「銅飲食器」「金銅火舎(こんどうかしゃ)」
「石燈籠」「紙本墨書常楽寺勧進状3巻 附:銅仏餉器」
(ただし、絹本著色浄土曼荼羅図、絹本著色仏涅槃図は、京都国立博物館へ寄託)
所在地 湖南市西寺6丁目5-1
電話番号 0748-77-3089
拝観時間 9:00~16:00
定休日等 11月1日~11月30日まで毎日可(その他期間は拝観に事前予約が必要)
拝観料 500円
※平成23年1月現在

~近江西国第一番の寺 湖南三山・常楽寺~

入母屋造、檜皮葺の本堂の奥に三重塔が見える。両方が一度に視界に入ることで、常楽寺ならではの景色を生み出している

 JR石部駅から南東に3キロメートル余り。阿星山の北麓に「常楽寺」は位置している。長寿寺、善水寺と共に「湖南三山」とも呼ばれ、近年紅葉の時季には多くの人が訪れる。湖南市にある湖南三山は、国宝に指定された本堂を持ち、紅葉で有名なのが共通点。常楽寺も、秋になると5種類、100本以上の紅葉が色づき境内を鮮やかに染める。常楽寺は、普段は予約者のみに拝観を許しているが、11月の1カ月については、期間限定で特別拝観を実施している。本堂の中に入り、国指定重要文化財の仏像が公開される貴重な機会として、県内外の注目を集めているのだ。

周囲の風景と調和した三重塔。2個の瓦に応永7年(1400年)とヘラで記されており、その頃の再建と見られている

 「常楽寺」は奈良時代中期の和銅年間(708~715年)、元明天皇の勅命により良弁(ろうべん)が開いた「阿星山五千坊(あぼしやまごせんぼう)」の中心寺院として、また紫香楽宮の鬼門を守護する寺としても栄えたという。平安から鎌倉期には、皇室の帰依を受け寺運は隆盛の時を迎えた。延文5(1360)年には、火災で全焼しているが、同年再興されている。昭和の半ば頃からは無住職時代が続き寺内は荒れ果てていたが、現在は住職が任命され、維持管理や復興に励んでいる。

 広い境内にたたずむ桁行七間、梁間六間、向拝三間、入母屋造、檜皮葺(ひわだぶき)の本堂は、明治31年に旧法により特別保護建造物に指定され、後の昭和28年に改めて国宝に指定されている。本堂内中央には秘仏の千手観音坐像が安置されており、周囲には重要文化財に指定された二十八部衆立像が安置されている。先の火災で諸堂は全焼したものの、仏像は僧侶たちによって持ち出され、難を逃れた。無住職時代の昭和56年にうち3体が盗難の被害に遭ったが、一体は発見され常楽寺に戻された。

裏山の遊歩道からは、ほかではなかなか見られないような角度から本堂を眺めることができる

 常楽寺の特徴は、国宝に指定されている三重塔が本堂のすぐ近くに建てられていることだ。釈迦如来坐像を安置する三重塔は、その姿形が美しいのも特色。背後の樹林に溶け込んで、本堂と共に絵になる光景を作り上げている。また寺内の裏山は近年整備が進み、参拝客が歩いて上ることができるようになった。小高い丘の上からは三重塔の上層階の様子や本堂の屋根など、通常の参拝では見ることのできない角度や方向からの風景を楽しむことができる。若林孝暢住職は、「どこからでも国宝が眺められるようにしたい」と、自らが木を切り、重機を操って整備を進めている。 

本堂内に安置された二十八部衆立像。小ぶりながらも、一体一体に個性があり、大きさ以上の迫力を感じさせる

 若林住職は「ご縁があってこのお寺へやってきました。荒れていた寺内を整備して、みなさんが安全にお参りできるように、ここに来てよかったなと思ってくださるようにと、努力を続けています」と話す。山に囲まれた寺には鹿や猪などの動物が多数訪れることもあって、維持管理は非常に難しいという。常に考えているのは、常楽寺を守り、次世代へと継承していくこと。同時に、もっとたくさんの人々に訪れてもらえる場にすることにも心を砕く。「信仰や宗教も大切ですが、まずはもっと気軽に訪れていただくことが大切だと思っています。みなさんが楽しんでくださって、来てよかったと思っていただくことから始まると思っています」と語った。
(取材日:平成22年11月18日)

関連タグ一覧