歴史再発見

龍潭寺庭園・彦根市古沢町

龍潭寺庭園・彦根市古沢町

基本情報
名称 龍潭寺庭園
URL
文化財指定等 「方丈襖絵五十六面」は彦根市指定文化財
所在地 滋賀県彦根市古沢町1104
電話番号 0749-22-2777
拝観時間 夏期9時~17時(受付は16時30分まで)、冬期9時~16時(受付は15時30分まで)
定休日等 無休(ただし臨時休あり)
料金 400円・小中学生150円
※平成22年10月現在

~禅僧たちが「造園」を学んだ、庭の寺・龍潭寺~

ふだらくの庭。最初に作られたころは今よりも石の数が少なく、元禄年間の頃に石が増やされ、現在のような形になったようだ。

ふだらくの庭。最初に作られたころは今よりも石の数が少なく、元禄年間の頃に石が増やされ、現在のような形になったようだ。

 龍潭寺の歴史をさかのぼると、天平5年(733年)に行基菩薩によって遠江国浜名湖井伊谷に開創されたと伝わる。井伊家の始祖である井伊共保がこの寺に葬られ、以降は井伊家の菩提寺となった井伊家との深いゆかりを持つ寺である。元中2年(1385年)後醍醐天皇の第三皇子・宗良親王によって中興され、寺号が龍潭寺とあらためられた。そして慶長5年(1600年)、関ヶ原の戦いに勝利した東軍・徳川家康の家臣・井伊直政が佐和山城を与えられたのを機に、井伊谷龍潭寺第5代の昊天(こうてん)禅師によって佐和山の西の麓に移建開山されることとなった。慶長7年(1602年)から建設が開始され、諸堂が完成したのは1617年のこと。方丈などを建てるための木材は、遠く長野県から運んできたといわれている。

鶴亀蓬莱庭園。画面奥が国内有数のものといわれる直下型の枯れ滝「龍門瀑」だ。佐和山の景色と庭園の緑が一体化して見えるように作られている。

鶴亀蓬莱庭園。画面奥が国内有数のものといわれる直下型の枯れ滝「龍門瀑」だ。佐和山の景色と庭園の緑が一体化して見えるように作られている。

 龍潭寺には方丈南側の「ふだらくの庭」と書院東側の「蓬莱庭園」などの庭が設けられているが、この寺にとって「庭園」は特別な意味がある。臨済宗妙心寺派の龍潭寺は禅宗を学ぶ道場として栄え、最盛期は200人以上の僧が修行していたといわれている。禅宗の中では修行の一つとして「庭園を造る」というものがあり、龍潭寺には造園を行う僧侶を養成する「園頭科(おんずか)」が置かれ、これが日本の造園学の発祥とされているのである。龍潭寺は「庭」を学ぶための場所、まさに「庭の寺」だったのだ。龍潭寺で造園学を学んだ僧は、日本各地の禅寺庭園の施工を行った。
 方丈南庭は「ふだらくの庭」と呼ばれる、枯山水の名庭だ。江戸初期に作られたもので、一面に敷き詰められ白砂と、その上に配置された大小48個の石などによって、観音菩薩のいる補陀洛山(ふだらくさん)の一帯をかたどっている。白砂は大海、中央の島が補陀洛山、杉垣は水平線、中央の大きな石が観音の立ち姿を表している。龍潭寺の本尊である楊柳観世音菩薩は、かつては寺の者でも60年に一度しか見ることができなかったため、「ふだらくの庭」に立つ観音の姿を通して、本尊へ思いを馳せていたのではないかと思われる。

学僧たちの修行用庭園。バラエティー豊かな植物が植えられている。

学僧たちの修行用庭園。バラエティー豊かな植物が植えられている。

 書院東庭の「蓬莱庭園」も江戸初期の作で、昊天和尚と江戸時代の大名で建築・作庭に優れた手腕を発揮した小堀遠州が協力して作った庭と伝えられている。小堀遠州は井伊谷の龍潭寺の庭園を作っており、その縁でこの庭の作庭に力を貸している。佐和山の峰を借景にした池泉鑑賞式の庭園で、仏教世界の世界地図を表現している。池の左側に配された岩島が亀を、右の木が鶴を表していることから「鶴亀蓬莱庭園」と称される。
 また書院の北庭は、造園学を学ぶ僧たちが修行するための庭として残っている。龍潭寺は「花の寺」としても広く親しまれており、一説には境内に3000種の植物があるともいわれ、四季折々どの時期にも何かの花を楽しめるほどだ。樹齢400年の沙羅樹(ナツツバキ)や栂(つが)、山桃などのほか、桜や白木蓮、さつきなど、たくさんの緑に包まれている。龍潭寺にたくさんの植物があるのは造園を学ぶ上で植物についての知識が必要だったのはもちろんだが、北の植物も南の植物も育つという彦根の気候や、全国各地からやってきた学僧が地元の植物を植えたのも理由のひとつだと考えられる。

夏には「龍潭寺白」という名のついた純白のムクゲが境内に咲く

 今回の取材で、ご住職から「庭を見るときは、漫然と見ていては良さが分かりません。例えば、庭と建物は一体です。庭だけ見るのではなく、建物や背景と合わせて見ることで庭の魅力が見えてきます。また外から見る庭と、建物の中から見る庭は違う姿です。見方を変えるたびに新しい発見や感じるものがあります」と、ご指南頂いた。龍潭寺の庭園は「五感を使って禅をする」ということの一端が理解できる、まさに学びの庭だった。
(取材日)平成22年9月13日

関連タグ一覧