歴史再発見

居初氏庭園・大津市本堅田

居初氏庭園・大津市本堅田

基本情報
名称 居初氏庭園
URL
文化財指定等 国指定名勝。建物は県指定文化財
所在地 大津市本堅田2-12-5
電話番号 077-572-0708
営業時間 9時~16時30分(要事前予約)
定休日等 不定休
料金 500円
※平成23年2月現在

~堅田湖族の愛した、絵画のような名庭~

琵琶湖の対岸を借景とした有名な庭。切石の配置などはモダンな雰囲気が感じられる。

 堅田湖族の中でも中心的な役割を果たしていた三家のひとつ、居初(いそめ)家の屋敷内に広がる、広さ約200坪の国指定の名勝庭園「居初氏庭園」。古くから運送、漁業などの湖上特権を得、江戸時代には大庄屋として地域に貢献してきた居初氏が作らせた、琵琶湖や対岸の三上山をはじめとする湖東の山々を借景とした枯山水庭園だ。庭園内には茶室「天然図画亭(てんねんずえてい)」が建てられている。茶室の造りや貴重なしつらえが見られるのはもちろんだが、茶室越しに見る庭の眺めが絶景。事前に申し出れば掛軸や資料、小道具などを拝見することもできる。

湖畔の絶景を楽しむために出庇が取り入れられている。

 庭園は、天和元年(1681年)江戸時代の著名な茶人・藤村庸軒(ふじむらようけん)と地元郷士の北村幽安(きたむらゆうあん)とが協力して作庭したものと伝えられている。庭園東側の石垣の向こうには琵琶湖が広がっており、サザンカやサツキなどの刈込の向こうに、湖水を隔てて雄大な山々をのぞむ。アラレ敷石の構成もあいまって、非常に美しい風景を作り出している。

欄間と中柱が施されているのは、客座との結界を造るため。点前座は、逆勝手の炉を配した向切。更に風炉先窓と三重棚が吊られている。

 江戸時代の茶人・千宗旦の門弟の中で特に活躍したものを「宗旦四天王」と呼ぶのだが、藤村庸軒はそのなかでも筆頭と目された人物だ。表千家の流れを汲む庸軒流茶道の開祖で、「庸軒好み」と呼ばれる茶室を残している。天然図画亭はそのなかのひとつで、滋賀県の文化財に指定されている。ヨシ葺の入母屋造、庇柿葺平入りの建物。玄関は3畳、中の間は4.5畳、仏間6畳、主室は8畳と1畳の点前畳からなり、船の構造がたくみに取り入れられている。8畳、3畳には腰高障子が入っており、腰板には、海北友松作といわれる花鳥が描かれている。
 手前座は向切逆勝手で、茶の道具が客に見えないように、主室との間に低い結界が付けられている。主人の謙虚さがうかがえる作りである。
 庭園の楽しみ方は人それぞれではあるが、なかでも天然図画亭の中に座り、建物ごしに見る庭園はまさに「天然図画」の名にふさわしい、一枚の絵のように感じられる。茶室単体は趣のある建物であるし、庭園もそれだけで非常に見事ではある。しかし、茶室越しに庭園を眺めてはじめてお互いが完成するかのように、互いが互いを補い合って高めているように感じられる。格子をつけず、板だけで作った蔀である板蔀や、腰高障子が取り入れられていたり、屋根が出庇になっていたりと、茶室の中や縁側からゆっくりと庭を眺めるための試みが随所にみられるのだ。「天然図画亭」の名は、天台僧の六如がつけたとされる。六如も、茶室から庭と琵琶湖の自然を楽しみ、風雅を味わったのかもしれない。

障子の腰板に、江戸時代初期の絵師・海北友松の筆と伝えられる花鳥図が描かれている。

 居初氏庭園の主人・居初寅夫さんは、「庭だけでなく建物も開放していますので、茶室の中や、茶室越しの庭園を見てもらえるのが特徴です」と話す。団体で来られるよりも、1人から少人数のグループで訪れ、ゆっくりと庭や茶室を鑑賞してほしいのだという。見学者には居初寅夫さんが丁寧に案内され、建物や庭の特徴・見所など、詳しく話していただける(要事前予約)。また、事前に申し込めば「天然図画亭」を使って茶会を開くこともできるという。
 悩みは維持管理について。ヨシ葺屋根の葺き替えや、庭の手入れ、建物の修繕などの負担が悩みの種になっているほか、ヨシが成長し過ぎて琵琶湖や対岸の景色が十分に楽しめなくなっているのだという。ヨシ群落保全条例との兼ね合いや刈る場合の費用など、居初氏庭園の抱える問題は少なくないようだ。
(取材日:平成22年12月10日)

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