歴史再発見

教林坊庭園・近江八幡市安土町

教林坊庭園・近江八幡市安土町

基本情報
名称 教林坊
URL http://www.d1.dion.ne.jp/~marche/kyourinbou/
文化財指定等 庭園は近江八幡市指定名勝
所在地 近江八幡市安土町石寺1145
電話番号 0748-46-5400(FAX:0748-46-5539)
営業時間 9時30分~16時30分(ライトアップ時は21時まで)
定休日等 年間を通じて土・日・祝日のみ拝観可。ただし紅葉シーズンの11月1日~12月10日は毎日拝観可
料金 500円、小・中学生200円
※平成22年11月現在

~巨石を用いた名勝庭園を現住職が復興~

豪壮さと繊細さが同居する教林坊の庭。幽玄な世界が広がっている

 近江八幡市安土町石寺という集落にひっそりたたずむ寺がある。「教林坊」というその寺は、推古13(605)年、聖徳太子によって創建されたと伝わる由緒正しい寺だ。聖徳太子が霊窟で邂逅した観音を自ら石に写し取り、それを本尊にしてこの地に建立したという。江戸時代の庫裏と表門、庭園が一式で残る貴重なものである。徳島県から移築したという葦葺の門をくぐり、細くなだらかな山道を150メートルほど進むと、緑に埋もれるように江戸時代の薬医門が姿を現し、俗世とは切り離された、張り詰めた静謐な空気があたりを漂い始める。

紅葉濃シーズンには、より幻想的な光景へと変化する(提供:教林坊)

 境内には「太子の説法岩」と呼ばれる大きな岩があり、木々に囲まれたこの岩の上で観音の教えを説いたところから号が「教林坊」となったといわれる。また太子が観音と出会った霊窟に、本尊の石仏や聖徳太子が瞑想したと伝えられる止観石が残されている。
 太子自作の石仏・赤川観音は子宝を祈念した村娘に子を授け、その娘が難産で苦しみ安産を祈ったときは帝王切開によって助けたという言い伝えがあるため、子授け・安産のご利益があるとされ、「九十九折れ たずねいるらん 石の寺 ふたたび詣らな 法の仏に」とご詠歌に詠われるように、困難な願い事も二度詣ですれば叶う「再度詣りの観音さま」としても信仰されている。紅葉の名所としても名高く、秋には真っ赤に染まる光景を楽しみに多くの人々が訪れる。
 本尊や太子の説法岩の存在から別名を「石の寺」とも呼ばれる教林坊。約2千坪の敷地内には里坊建築の古様式を伝える市指定文化財の葦葺き書院があり、西面の巨石を用いた名勝庭園は小堀遠州作と伝えられる。池を中心に景勝などを再現する、桃山時代を象徴する庭園であり、枯れ滝、鶴島・亀島などが配されている。作庭は豪快であると同時に、豊かな情緒も生み出している。また、庭内では小堀遠州考案といわれる水琴窟も見ることができる。教林坊の水琴窟は、5カ所以上から水滴が落ちるように工夫されているのが特徴。それぞれの水滴が奏でる美しい調べを味わうこともできる。

安産の血によって川が赤く染まったことから、「赤川観音」と呼ばれるようになったという

 由緒も趣もある教林坊だが、昭和50年頃から後継者に恵まれず無人になっていた。庭園は地元の人々が手入れをしていたが、本堂をはじめ建物は荒れ果て「お化け寺」と呼ばれるまでになっていた。廣部光信氏が住職に就任したのは平成7年のこと。私財を投じ、ご自身で大工仕事も行いながら復興に尽力し続けた。地域の人のあたたかな支援にも助けられ、現在は立派な姿を取り戻し、寺を訪れる人も増えている。

聖徳太子が説法を行ったという巨岩。庭の中でもひときわ存在感を放っている

 廣部住職は「当坊は、普段の生活とはかけ離れた自然溢れる空間。疲れた心の洗濯に来る方や、日常をリセットする方もいらっしゃいます。感じ方は人それぞれだと思いますが、ゆっくりした時間の中で自分を見つめ直していただくとよいのではないでしょうか」と、分かりやすく仏の教えを伝える住職ならではの言い回しで語る。また寺の復興については、一応の完成とは言いながら「これで終わらず、地域のほかの場所も含めてもっと進めて行きたいと思っています。ご縁あってここに来て、復興に取り組んできましたので、今後もご縁の導きの中で活動をしていきたいと思っています」と、今後への意欲や熱い想いが静かな口調にこめられていた。
(取材日:平成22年11月10日)

関連タグ一覧