美 再発見

沖島ワンダーランド

琵琶湖最大の離島にして、日本で唯一人が住む淡水湖の島、「沖島」。

そこは、他ではなかなか体験することのできない、懐かしくも新鮮な「美」の宝庫。

まずは、沖島の「まちなみ」。

ここは、沖島のメインストリート。自動車が1台も走っていない沖島では、「道幅」の感覚が本土と違う。ふだん我々が生活しているエリアが、いかに自動車中心に設計されたサイズに支配されているかが、ここに来るとよく分かる。車ではなく、歩いて生活するために「最適」な道幅。歩くと、すごーく、心地よい。
写真右側に並んでいるのは、沖島名物「三輪自転車」。島のおばあちゃんたちの足である。


我々がイメージする「道」は、「民地(家)」と「官地(道路)」が明確に線引きされ、自動車が行き交う道路のこちら側と向かい側の生活を分断する存在。一方、沖島の「みち」は各々の家の生活の延長であり、「家」から「公共の場」、さらには「近隣の家」へと移ろうファジーで連続した空間。ごはんやシジミを炊いたり、洗い物をしたり、洗濯物を干したりする場でもあり、そういった営みを通じてご近所同士は常に顔を合わせ、会話を交わすことができる。


「まちなみ」「漁船」と並んで沖島固有の文化的景観を特徴付けているのは、なんといっても「畑」である。上の写真は、集落のはずれにある、石切り場の跡地を島民に分譲したユニークな形状の段々畑、通称「千円畑」。島のおばあちゃんたちは、三輪自転車で毎日ここへ通い、畑で野菜を育てつつ、井戸端会議に花を咲かせる。島民曰く、「これが健康の秘訣」とのこと。高齢化率が突出する沖島だが、要介護率は驚くほど低いらしい。


畑には、野菜ばかりでなく四季折々に綺麗な花が常に咲いている。漁村ならではの文化で、湖を見渡せる高台にお墓が並び、そのお墓に花を絶やさず生けることで、ご先祖様に漁の安全を見守ってもらうのだそうだ。


そして、畑には柑橘類も多く植わっている。かつて漁村では魚中心の食生活だったため、ビタミン欠乏症を予防するためビタミンが豊富な柑橘類を植えることが奨励されたらしい。


沖島小学校の木造校舎はとてもステキで立派な建物だが、そこに通う小学生は全校で10人ぐらい。
さびしくもあるが、ある意味、ほんとうに贅沢でうらやましい教育環境だと思う。数年前から越境入学・編入学が可能になり、今も本土からわざわざ船で沖島小に通っている小学生がいる。「母校」がそこにあり続けることが、コミュニティ存続の大きな鍵、と島民の皆さんは言う。いつまでも沖島小に子ども達の笑顔が絶えないことを祈る。


沖島小にはプールもあるが、何と言っても目の前が琵琶湖。沖島小の児童専用のプライベートビーチも存在する。
ここでのびのびと育った子ども達が、ゆたかな自然と希少な生活文化の中でたくさんの貴重な経験を積んで、将来、滋賀の美を守り育てる担い手になってくれると信じたい。

ほかにも、鮒寿司、ビワマス、ムナギ(胸が黄色い琵琶湖産のウナギをムナギと呼ぶらしい)など美味なる伝統食文化に加え、琵琶湖の厄介者であるブラックバスを資源として活用したB級グルメ「沖島よそものコロッケ」などの新しい美味の探求も進みつつある。

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湖岸の堤防にさり気なく置かれたかぼちゃ。…これだけで何となくアートになってしまうのも、沖島だからこそ。

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