伝統再発見

しとぎ祭・大津市小野

しとぎ祭・大津市小野

基本情報
名称 しとぎ祭
URL
文化財指定等 小野篁神社本殿と小野道風神社本殿は国指定重要文化財
所在地 小野神社(滋賀県大津市小野1961)
電話番号 077-522-3725(近江神宮)
開催日 毎年11月2日
定休日等
料金 無料
※平成22年11月現在

~お菓子の元祖「しとぎ」を神に捧げる長い歴史のある祭り~

たくさんの「しとぎ」が、神前に供えられる

 大津市小野地区にある小野神社は、天足彦国押人命(あまたらしひこくにおしひとのみこと)と、その子孫である米餠搗大使主命(たがねつきおほおみのみこと)を祭神として祀る神社で、延長5年(927年)完成の『延喜式』神名帖には「小野神社二座名神大」とあり、日吉大社と並ぶ官幣社であった。この神社で毎年11月2日、地元の氏子たちによって、古式にのっとって執り行われている神事がしとぎ祭だ。

社の前には石で作った鏡餅が左右に置かれている

 天足彦国押人命はこの地を本拠地とした古代豪族・小野氏の祖とされ、この社は小野氏の氏神社である。小野氏といえば、遣隋使として歴史の教科書にも登場する小野妹子や、政治家であり学者で歌人でもあった小野篁、書道や学問の神とされる小野道風などを輩出した名門だ。境内には小野篁を祀る小野篁神社があり、飛地境内社として小野道風を祀る小野道風神社、また小野妹子神社がある。米餠搗大使主命は天足彦国押人命から数えて7代目の子孫で、応神天皇の頃に初めて「しとぎ」を作ったと伝えられている。しとぎは漢字では「粢」と書き、水に浸した生米をつき砕いて粉にし、それを水でこねて固めた食べ物である。藁つとに包んで腰に下げて持ち歩き、農作業の合間などに藁ごと焼いて火を通し、間食したようだ。餅の原型とされるしとぎを作った米餠搗大使主命は餅、そして菓子作りの神様として全国の製菓業界で信仰され、小野神社では毎年10月の第3土曜日に全国から菓子業者の代表が集まり、小野神社奉賛会による祭が行われている。

境内での儀式が終わると、しとぎが集落内の注連縄のところまで運び出される

 菓子の老舗の屋号に「匠」「司」が使用されるのは、「匠」「司」の称号が菓子業の功績者に与えられる免許だったことの名残であり、小野道風が「匠」「司」の称号を授与することを勅許されていた人物であったと言われている。11月2日に行われる本祭は五穀豊穣を祈願する神事で、小野地区の氏子総代らが準備をして当日を迎える。参加するのは氏子総代5名のほか、「十二人衆」や「宮年寄」とも呼ばれる長老衆と、一般参加者代表の者だけで行われる規模の小さな祭りだが、この古い祭りが始まったのはおよそ1200年前だと伝えられている。

注連縄に通されたしとぎの前で、再び祈りが捧げられる

 古来より伝わるしきたりに従って神饌(しんせん)に用いるためのしとぎなどが用意され、現在、宮司が常駐していない小野神社に近江神宮から神職が来て、しとぎの儀式が執り行われる。儀式が終わると神に捧げられたしとぎは、集落内に3箇所ある竹ざおに張り渡された注連縄のところまで運ばれる。しとぎは注連縄の下まで運ばれ、注連縄を通して吊るされるのである。吊るされたしとぎを前に神職により祈りが捧げられ、それが終わるとすぐにしとぎは注連縄から外され、縁起物として見物客に配られる。最初の1カ所は神職が付いていくが、残りの2カ所は氏子だけで行われる。こうして、小野神社の氏子たちが代々受け継ぐ長い歴史を誇る神事は幕を下ろす。
氏子総代のひとりである谷伊佐雄さんは、「氏子の手によって、これだけ長い歴史を誇る祭りが受け継がれてきたことを誇りに思います。これからもこの伝統をいつまでも残していきたいですね」と語ってくれた。
(取材日:平成22年11月2日)

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