伝統再発見

楽器糸・長浜市木之本

楽器糸・長浜市木之本

基本情報
名称 楽器糸
URL http://www.marusan-hashimoto.com/(丸三ハシモト株式会社HP)
http://www.pref.shiga.jp/kakuka/f/chushoukigyo/kougeihin/kougeihin.html(滋賀県商業振興課HP)
文化財指定等 知事指定滋賀県伝統的工芸品
所在地 長浜市木之本町木之本1049(丸三ハシモト株式会社)
電話番号 0749-82-2167(丸三ハシモト株式会社)
営業時間
定休日等
料金
※平成24年3月現在

~よりよい音色を探求して~

伝統音楽を支える楽器糸。写真は三味線の糸で黄色く染色されている。商品としてこの状態になるまでにおよそ12の工程がある。(写真丸三ハシモト提供)

 三味線や琴、沖縄の三線など伝統的な弦楽器は様々な日本文化とともに現在に伝わっている。これらの楽器に欠かすことができないのは、もちろん音を出すための糸である。あの独特な音色を奏でることができるのは絃が絹糸でできているからだ。その楽器糸の製法が滋賀県に伝わっている。
 平安時代に始まったとされる楽器糸の生産。昔は大阪や京都など芸能が盛んな地域に生産の拠点があったというが、時代とともに数は少なくなり現在では全国で7社しか生産をおこなっていない。そのうち4社は滋賀県内にあり、滋賀県は全国で一番の楽器糸生産量を誇る。様々な楽器の音色を出すためには高度な技術が必要とされ、滋賀県知事指定の伝統的工芸品に指定されている。

目方合わせを行う代表の橋本圭祐さん。目視ではわからない0.01mmの調整が行われている。(写真丸三ハシモト提供)

 楽器糸の生産はそのほとんどが手作業で行われる。まずは仕入れた生糸を手作業で「小枠」に巻き替えていく『繰糸(くりいと)』と呼ばれる工程。次にその巻き替えた糸を一定の長さで結びをつけていく『寸法取り』が行われる。それがすむと糸を5本程度合わせて一本にする『合糸』。その次に一本に撚り合わせる原糸の量を決定する『目方合わせ』を行う。
 原糸はもちろん蚕からとれた天然ものなので太さが一定ではないため、本数ではなく重さで揃える。糸をそろえることができれば次に『撚糸』を行う。糸を数十本~数百本合わせて撚りをかけていくが、太さによって撚る回数は異なる。次に『染色・糊煮込み』が行われる。三味線の糸は昔から楽器との色合いを考え黄色に染められている。
 染料にはショウガ科のウコンの根茎からとられるウコン粉が用いられる。これには防虫効果もあるという。染色がおわれば餅糊で煮込み糸を固める。このあと糸を引っ張りながら柱にかけ自然乾燥させる『糸張り・乾燥』。糸を伸ばすだけの部屋の長さが必要となるので、工場は長い場所が必要となる。このことも都会の消費地から生産拠点が移り変わった要因ではないかとも考えられている。
 そして、糸に残った節を削り取る『節取り・選別』。見ているだけでは見落とす場合があるため、指の感触を頼りに探り当てていく。小さな節でも弾き手の指にかかって演奏の妨げになってしまうため細かなものでも見逃すことはできない。
 最後は『糊引き・乾燥』、糸を糊に浸して表面をコーティングし、乾燥させる。このとき、糊が薄いとすぐにはがれて音に張りがなくなる。逆に厚すぎると糸は丈夫でも音が響かなくなる。仕上げは定められた寸法に糸を切断し、竹製の筒に巻き取って筒を抜き取り、紙で巻きとめる。この状態で商品として店に並ぶ。

糸張り場に伸ばした状態で乾燥させてある三味線の糸。(写真丸三ハシモト提供)

 滋賀県長浜市木之本にある丸三ハシモト株式会社は良質な生糸の生産地である大音、西山地区と同じ長浜市木之本町に明治41年に創業した楽器糸の老舗。全国各地のプロの演奏家からも高い評判を得ている。平成22年には、新しい挑戦からウクレレの絃も開発し商品化している。中国の伝統楽器(二胡、中胡、琵琶、古琴等)の絹絃を提案し、平成23年10月11日~14日、中国、上海で行われた国際楽器展覧会「MUSIC CHINA」(主催:メサゴ・メッセフランクフルト)に出展するなど幅広い活動を行う。

熟練の技が要り独楽撚り。作業を行う二人のあうんの呼吸も大事な要素となっている。(写真丸三ハシモト提供)

 専務取締役の橋本英宗さんにお話を聞いた。三味線だけで200種類を超える糸があるという楽器糸。丸三ハシモトでは350種類以上の糸を製造している。年間で数本しか作らないものから数万本作るものまで様々だという。演奏家のニーズにこたえるためには機械化よりも手作業で行う方が多くの声に応えることができるそうだ。
 全国でも丸三ハシモトでしか行われていない技法に「独楽撚り」というものがある。独楽とよばれる重りを糸の端に結び、特製の板で挟んで回す技法で糸の撚り加減をおもりの上昇距離から判別する、職人年季をつんで感覚を身につけないとできない職人技である。この独楽撚りでしか生み出せない音があり、生産性が低くても「良い音」の追求のため、また技術の伝承のため、あえてこの製法にこだわっているのだそうだ。丸三ハシモトには30年以上の経験を積んだ職人が4名いる。
「楽器糸は伝統芸能にも深く関わるもので、滋賀県で作られたものが日本中で使われていることを地元の人に知ってほしい。」修行をつんで10年が過ぎ、様々なことがわかってきたという英宗さん。絹糸でできた絃というのは世界的にも特殊で、希少価値は高いという。伝統的な技法を守り続けていくためにも和楽器にとらわれず他の楽器の絃にも挑戦したいと高い意欲を見せてくれる。消耗品なのであとに残るものではないが、楽器を使う人にとっては重要なもの。自社の特徴を出しつつ音色のよさを追求してきたいと語ってくれた。
 楽器糸では、丸三ハシモト株式会社のほか、西山生糸組合、木之本町邦楽器原糸製造保存会が滋賀県伝統的工芸品の製造業者として指定を受けている。

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