伝統再発見

篠田の花火・近江八幡市上田町

篠田の花火・近江八幡市上田町

基本情報
名称 篠田の花火
URL http://www.city.omihachiman.shiga.jp/contents_detail.php?co=kak&frmId=1489(近江八幡市HP)
文化財指定等 国選択無形民俗文化財
開催地 篠田神社(近江八幡市上田町1613)周辺
電話番号 0748-36-5517(近江八幡市役所産業経済部商工観光労政課)
開催日 毎年5月4日
開催時間 20時頃~22時頃
料金 無料
※平成22年11月現在

~全国的に見ても珍しい伝統の和火仕掛け~

迫力のある三河の手筒花火

 江戸時代に始まったとされる「篠田の花火」は、3月に行われる「左義長まつり」、4月に行われる「八幡まつり」と並んで、「近江八幡の火まつり」のひとつに数えられ、700年を超えるとされる由緒ある「篠田の火祭り」の出し物(奉納物)のひとつである。JR近江八幡駅の東、東海道新幹線の目と鼻の先にある篠田神社で3日間にわたって執り行われる春の例祭の一部で、五穀豊穣と住民の安寧を願って、毎年5月4日の夜に行われる。
 国の無形民俗文化財にも選択されているこの祭りの特色は、国友村の鉄砲火薬作りの技術を応用して、江戸時代中頃から、硝石を用いて作った花火を奉納したことである。中でも、明治に入って始めた硫黄とミョウバンを主剤とした独特の仕掛け花火は淡い青紫色の炎を放ち、暗闇に浮かびあがる光景は神秘的だ。

全国各地から奉納された打ち上げ花火が夜空を彩る

 「篠田の火祭り」は、大太鼓の音とともに火の粉を散らす松明が、篠田神社境内に宮入りするところから本番となる。そのころまでに境内には大勢の人がつめかけ、よく見える場所を求めてさながら陣取り合戦の様相。夜8時過ぎ、何発かの試しうちのような打ち上げ花火が上げられたあと、夜9時過ぎには、信州伝統の仕掛け花火「大三国」や三河地方の伝統花火「手筒花火」が披露され、その迫力に見物客の目も釘付けになっていた。その後、全国各地の煙火店から奉納された打ち上げ花火が、煙火店の名前や花火玉の大きさのアナウンスとともに次々と打ち上げられた。これらの打ち上げ花火も技にこだわった美しいものが多く、打ち上げのたびに大きな歓声とカメラのシャッター音があちらこちらから聞こえた。神様に捧げる花火ということもあって、各煙火店のこだわりが見られ、さながら打ち上げ花火の見本市を見ているようでもあった。

篠田の花火の最大の見せ場、仕掛け花火と巨大松明

 打ち上げ花火が終了し、「ナイアガラ」の仕掛け花火が終わると、いよいよお待ちかねの日本古式の仕掛け花火、「和火仕掛け」だ。「篠田の花火」のトリを飾るこの仕掛け花火は、杉板を何十枚も組み合わせて作った縦約10m、横約20mの大きな立て板に、硫黄やミョウバン、米粉糊などを混ぜたものを取り付け、黒色火薬を塗ったもの。全国的に見ても稀な花火で、毎年違う絵柄が浮かびあがる仕組みだ。「篠田の花火保存会」の会員らがいまも手作りで1ヶ月もかけて準備するのだという。点火の方法も独特で、仕掛け花火の板と20mほど離れた櫓台との間にロープを張り、「綱火」と呼ばれるロケット花火状のものを矢のように放って点火する。この最後の大仕掛けの和火の前には、ひと回り小さなもうひとつの仕掛け花火に点火され、赤や緑にきらめくドラゴンボールの絵柄が数分間にわたって浮かびあがった。

最後の仕掛け花火、「風神」「雷神」の絵が暗闇に浮かぶ

 そしてついに、最後の大仕掛けの和火に点火。あいにく「綱火」による点火は成功せず、人の手によって点火されたが、その直後、爆音とともにぐるぐると激しく渦のように回転する花火の炎や、オレンジ、赤の炎が目もくらむほどにはじけ、あたりには白い煙と火薬の匂いが立ち込めた。煙幕のような煙が風に流されると、今度は青紫の淡い炎でかたどられた「風神」と「雷神」の絵が、じりじりと、そして静かに、真っ暗な境内に浮かびあがった。その幻想的な光景を前に、誰もが食い入るように見入っていた。
(取材日:平成22年5月)

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