芸術再発見

滋賀県立琵琶湖博物館・草津市下物町

滋賀県立琵琶湖博物館・草津市下物町

基本情報
名称 滋賀県立琵琶湖博物館
URL http://www.lbm.go.jp/
文化財指定等
所在地 草津市下物町1091
電話番号 077-568-4811
開館時間 9時30分~17時(入館は~16時30分)
定休日等 月曜(休日の場合翌日)、年末年始、その他臨時休館あり
料金 大人750円、高校生・大学生400円、小学生・中学生無料
※平成23年1月現在

~遊び心いっぱいの展示で琵琶湖に思いをはせるきっかけに~

博物館の各展示室から琵琶湖を望むことができる構造になっている。これは琵琶湖への「入り口」として、常に琵琶湖へ意識が向くようにとの意図がある。

博物館の各展示室から琵琶湖を望むことができる構造になっている。これは琵琶湖への「入り口」として、常に琵琶湖へ意識が向くようにとの意図がある。

 草津市の烏丸半島に建つ県立琵琶湖博物館は、「湖と人間」をテーマにした博物館である。A・B・C、3つの展示室のほかにディスカバリールームや屋外展示など、さまざまな形式で琵琶湖の自然と人々の生活に関する展示が行われ、湖と人間のよりよい共存関係を目指すための「入り口」の機能を果たしている。

A展示室のとある場所に置かれたバケツの蓋には「絶対あけるな」の文字が。開けたくなるように誘導する仕掛けだ。

A展示室のとある場所に置かれたバケツの蓋には「絶対あけるな」の文字が。開けたくなるように誘導する仕掛けだ。

「琵琶湖のおいたち」と題したA展示室は、世界でも有数の古代湖である琵琶湖と、滋賀の大地の成り立ちを理解するための展示エリア。およそ2億5千万年前から自然環境がどのように変遷していったのか、琵琶湖前史、琵琶湖の生い立ち、古い琵琶湖から現在の琵琶湖へ、と順を追って理解できるように流れを作りながら展示・解説し、琵琶湖の自然について考える基本的な材料を提供している。研究・調査の現場の再現や、化石・岩石・鉱物の標本なども含め、ほとんどの展示物に手で触れるようになっており、直接的に触れ合うことで琵琶湖の自然を身近に感じることができる。展示物を単に並べるだけでなく、利用者自身が探したり、工夫して観察したりするとより楽しめるような工夫がされているなど、来館者自身が能動的になることで、より自由に、より深く、展示を楽しむことができるのも特色だ。

C展示室の、「農村のくらしと自然」について展示するエリア。農家の建物が内部まで再現され、家の中にあがることもできる。

C展示室の、「農村のくらしと自然」について展示するエリア。農家の建物が内部まで再現され、家の中にあがることもできる。

 B展示室では、琵琶湖と人間のかかわりの歴史が紹介されている。「湖底遺跡」「湖上交通」「漁労」「治水・利水」という4つのテーマから、琵琶湖周辺における人びとのくらしと琵琶湖の結びつきが分かるようになっている。世界最大の淡水貝塚である「粟津貝塚」の剥ぎ取り標本や、琵琶湖独特の木造船・丸子船、身近な材料から工夫して作り出した漁の道具など大きな展示物が置かれ、滋賀の歴史をダイナミックに伝えてくれる。
 C展示室は、2階の「湖の環境と人びとのくらし」と1階の「淡水の生き物たち」に分かれている。2階では琵琶湖の水利用の変化、人間の暮らしと生活観の変化、生態系の変化をたどることで琵琶湖の環境について深く考えられる空間だ。堅苦しく感じるテーマだが、文化や生活面の身近なことを用いて、抵抗なく理解できるように工夫も施されている。1階は、「現在の琵琶湖の環境」の一部として、さまざまな生き物たちの姿が見られる、水族展示と称されているエリアだ。特徴は、水族館のような形式で行われている、琵琶湖を中心とした日本の淡水の生き物、および世界の代表的な湖の魚類の展示。生息環境もできるだけ再現し、ただの展示で終わることなく、自然の環境、魚たちの世界に思いを馳せることができる。
 ディスカバリールームはハンズ・オン(触れる)展示室で、五感をフルに使って自然や暮らしについて、新たな発見ができる。大人も童心にかえって楽しめるスペースだ。

保護増殖センターの内部。増やした種をほかの研究施設にわたす、飼育担当者の人材交流を行うなど、リスク分散を図る方策も行っている。

保護増殖センターの内部。増やした種をほかの研究施設にわたす、飼育担当者の人材交流を行うなど、リスク分散を図る方策も行っている。

 展示だけでなく、研究や資料の整備、地域との交流、情報の収集・提供など多岐にわたる活動が行われている琵琶湖博物館の中でも、とりわけ重要な取り組みの一つである、保護増殖センターの活動についてお話をうかがった。同センターでは日本国内で絶滅の危機に瀕しているイタセンパラやアユモドキ、減少傾向にあるハリヨやゼニタナゴなどを飼育し、繁殖方法などを研究している。担当している学芸員の松田征也さんによると、増殖・繁殖の研究を行うためにこれだけの施設があるところは県内どころか、国内にもあまりないとのこと。まずは種の維持に努め、最終的には種の自然復帰が目標だが、繁殖を行う技術や経験を積み重ねていくことも目的の一つだ。「飼育や繁殖の研究にはデータも大事ですが、マニュアル通りにはいきませんので、データ以上に飼育する側の経験が大切です。そして飼育する側が経験を積むためには、『継続する』ことがとても重要になってきます。しかし繁殖・増殖はすぐに利益を生み出すような研究ではありませんので、なかなか継続できる環境がないのが悩みでもあります。しかし琵琶湖博物館では繁殖・増殖の活動を長期にわたって行い、非常に高い評価を得ています。保護増殖センターの様子は、窓越しにしか見てもらうことができませんが、琵琶湖博物館の内部でこのような研究が行われていることを、多くの人に知ってもらえるとうれしいですね」

飼育下の野生動物の繁殖における優れた業績に対し授与される「古賀賞」のメダル。アユモドキ、イタセンパラなどの系統保存に対して賞が贈られた。

飼育下の野生動物の繁殖における優れた業績に対し授与される「古賀賞」のメダル。アユモドキ、イタセンパラなどの系統保存に対して賞が贈られた。

 今回の取材の中で、学芸員の桝永一宏さんには博物館の「自分化」という話を聞かせていただいた。「展示されたものをただ眺めるだけでは、情報が素通りしていくだけで知識が自分のものになりません。博物館の『自分化』というのは、展示物に思い入れや親しみを持ってもらうことで、自分なりの楽しみ方を見つけてもらうことです。自分で見て触って考えることで、博物館で学んだことが自分の知識になるのです。そのために『学びたい』という気持ちを見る人に呼び起こす仕掛けをたくさん仕込んでいます。ぜひ琵琶湖博物館に何度も足を運んでいただいて、その仕掛けを見つけてください。来館のたびに新しい発見があるはずです」
(取材日:平成22年10月5日)

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