芸術再発見

NO-MA

NO-MA

基本情報
名称 ボーダレス・アートミュージアムNO-MA
URL http://www.no-ma.jp
文化財指定等
所在地 近江八幡市永原町上16
電話番号 0748-36-5018
開館時間 11時~17時
定休日等 月曜(月曜が休日の場合は翌日)、展示替え期、年末年始
料金 200~500円(企画展によって変更あり)
※平成23年3月現在

~既成の枠を超えたアートに触れるミュージアム~

NO-MAの建つ永原町通り周辺は、旧市街地の風情を色濃く残す近江商人本宅の家々が立ち並んでいる。

 近江八幡市の旧市街地、重要伝統的建造物群保存地区に指定されている永原町にある「ボーダレス・アートミュージアムNO-MA」。野間家分家として昭和5年に建てられた数寄屋造りの町屋を改築し、オルタナティヴ・スペース(多目的空間)として展示施設に利用している美術館だ。1階はメインギャラリー、2階は畳敷きのギャラリースペースのほか、中庭に建つ蔵も展示スペースになる。 同館は老人ホームなどの運営を行う社会福祉法人滋賀県社会福祉事業団が設立・運営する美術館として2004年6月にスタート。2007年には博物館相当施設の指定を受け、現在の名前に改称された。年4回の企画展や貸しギャラリーとしても機能している。

2階には展示室以外に、ライブラリーコーナー、メッセージや絵を描くことのできるスペースが用意されている(展覧会によって異なる)。

 館の特色は、障害のある作家の作品と、一般のアーティストの作品を並列に展示するという試みを行っている点だ。“ボーダレス・アートミュージアム”の名は、「障害者と健常者」とのボーダーのみならず、「福祉とアート」や「アートと地域社会」など、世の中に存在するさまざまなボーダーを超えていくことにより、障害の有無を超えたところにある「人間の持つ普遍的な表現力」をリアルに感じることができることができるように、という意味が込められている。独自性は維持しつつも、小さな枠に収まることなく、自由で大胆な展示を行っているのだ。

 NO-MAで展示する作家の作品の多くは、「Art Brut(アール・ブリュット)」とも呼ばれている。「アール・ブリュット」とは、伝統や流行、教育などに左右されず、自身の内側から湧き上がる衝動のままに表現した芸術、加工されていない「生(き)の芸術」を意味する。フランスの画家ジャン・デュビュッフェによって考案された概念で、英語では「アウトサイダー・アート」と称されている。自らの心と向き合いながら生み出す作品には、内面から湧き出てくる表現があり、見る人の心を震わせるような圧倒的なエネルギーと、何者にもとらわれない自由な発想が感じられる。「ボーダレス・アートミュージアムNO-MA」の大きな目的のひとつは、そんな、人々の心をつかんで離さないアートを紹介することにある。
 絵本作家のはたよしこさんをアート・ディレクターとして迎え、はたよしこさん自らが企画する展覧会のほか、外部のキュレーターによる展覧会も意欲的に開催。また、全国のアール・ブリュット作家の作品調査を行うと共に、作品の収蔵・保存の研究や、作家と作品の権利保護など、作家を支援する活動にも力を入れている。家庭や、施設・病院内で生まれても気付かれずに消えていく作品を発掘するために、福祉施設など関係団体や各家庭への啓蒙活動や、病院や福祉団体のみならず、国内外の美術館学芸員など美術関係者などとの連携も持ち、新たな才能を世に出すための活動を行っている。

平成22年9~11月に開催された、秋の特別企画展「ミクロとマクロ」の展示風景。

 滋賀県社会福祉事業団の山之内洋さんは「滋賀県は戦後間もないころから障害者福祉に先駆的に取り組んできて、施設内で授産活動を進める一方で、陶芸を中心とした自由造形などの芸術活動にも力を入れてきました」と話す。ユニークでエネルギッシュな作品が続々と生まれていたが、展示できる場がないのが悩みだったという。人々の要請を受けて生まれた「ボーダレス・アートミュージアムNO-MA」は、町屋を再利用することによって、従来のギャラリースペースとは異なる魅力的な空間になった。「町屋を再利用することにより、作品と町屋の雰囲気がマッチした、人々の息吹が感じられるような空間ができたと思います。作品とじっくり対話しながら見ていただきたいですね」と語った。

施設内にある蔵も展示スペースとして活用される。写真は平成23年2~5月に開催された、春の特別企画展「ココロの景色 COCORO-KESHIKI」の展示風景。

 海外のアール・ブリュットとの連携にも積極的に取り組む。2008年1月にはスイス・ローザンヌにあるアール・ブリュットの美術館「Collection de l’Art Brut(アール・ブリュット・コレクション)」との交流事業の一環として、日本とスイスで同時期に企画展を実施。アール・ブリュット・コレクションで開催された企画展「JAPON(ジャポン)」は欧州を中心に好評を博し、会期が1年間延長されることとなった。ウィーン市にある国立美術館「Kunst Haus Wien(クンストハウス・ウィーン)」への巡回も果たすなど、日本のアール・ブリュットを世界に紹介するきっかけとなった。
 この展覧会の成功は、さらに2010年3月~2011年1月まで、「Halle Saint Pierre(パリ市立アル・サン・ピエール美術館)」での日本の作家による企画展「ART BRUT JAPONAIS(アール・ブリュット ジャポネ)」につながり、63名の作家の作品が芸術の都フランスで展示された。2011年2月には凱旋展覧会を大津プリンスホテルコンベンションホール淡海にて開催した。
「スイスとの合同展が契機になり、日本のアール・ブリュットに関心を持つ人が国内外に増えました」と山之内さん。「ボーダレス・アートミュージアムNO-MA」を取り巻く環境がよい方に変化しているのがわかるという。これを機会に、さらに企画展に足を運ぶ人を増やすのも目標だ。「まずは足を運んで作品を見てもらい、素直に楽しんでほしいですね。子どもさんや学生の方にも見てほしい。展示物もボーダレスですが、見に来る方もボーダレスで楽しんでいただければと思います」。
 今後は、同館での企画展や海外との協力事業を続けていくのはもちろんだが、県ともより強く連携を持ち、日本やアジアの拠点としての力をつけ、「3~5年後には、再度パリで展覧会を開けるように準備を進めたいと思います」。
(取材日:平成23年1月21日)

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