芸術再発見

滋賀県立近代美術館・大津市瀬田

滋賀県立近代美術館・大津市瀬田

基本情報
名称 滋賀県立近代美術館
URL http://www.shiga-kinbi.jp/
文化財指定等
所在地 大津市瀬田南大萱町1740-1(文化ゾーン内)
電話番号 077-543-2111
開館時間 9時30分~17時(入館は16時30分まで)
定休日等 毎週月曜日、年末年始※月曜日が祝日の場合は、翌日休館
料金 常設展:一般/450円、高・大生/250円
     小・中生/無料※企画展はその都度、別に定める
※平成22年10月現在

~体験型展示やワークショップを実施。市民が美術に親しむきっかけに~

文化ゾーン内にある、滋賀県立近代美術館。緑豊かな環境で芸術作品と向き合える。

文化ゾーン内にある、滋賀県立近代美術館。緑豊かな環境で芸術作品と向き合える。

 県立図書館、埋蔵文化財センターなどの施設がある「びわこ文化公園」の中に、滋賀県立近代美術館が開館したのは、1984年8月のこと。優れた美術作品の収集・調査・研究をするだけでなく、展示やイベントを通じて滋賀県民の美術に対する理解や感覚を養うことと、美術にもっと親しんでもらうことを目的に誕生した。
 近代美術館の収集方針は、日本美術院を中心とした近代日本画、郷土滋賀県ゆかりの美術、戦後のアメリカと日本を中心とした現代美術の3つである。同館が開館した当時には、「現代美術」に重きを置いて収集を行う美術館は関西になく、大きな注目を集めた。今では、現代美術においては海外からも評価されるコレクションとなり、日本美術では収集の後に重要文化財指定を受けた屏風作品も所有している。
 収集された美術品は常設展示室にて、入れ替えをしながら展示。特に郷土出身の女流日本画家、小倉遊亀の作品はコーナーが設けられている。

企画展示室内。どんな企画展示を行うのか、学芸員の楽しみでもあり苦労でもある。

企画展示室内。どんな企画展示を行うのか、学芸員の楽しみでもあり苦労でもある。

 企画展示については、基本的には同館の学芸員が取り仕切りを行う。美術館の学芸員というと、収蔵品の研究や美術品の調査、博物館での作品解説だけを行っているように思うが、実際はイメージと違い、活動範囲は多岐にわたる。学芸員の活動について、滋賀県立近代美術館 総括学芸員の桑山俊道さんに教えていただいた。
「美術館の最大の目的は展示を行うこと。ですから、学芸員の第一の仕事も展示です。企画展の場合は何もないところから知恵を絞って作り出します。さらに企画が決まってからも、次々にやることが増えてきます。必要な作品をどうやって集めるのか、集めた作品の展示の仕方、説明ラベル・パネル・図録の作成に会場のディスプレイから広報まで全部が、学芸員の仕事。いうなれば総合プロデューサーですね」と桑山さん。「誰も来なかったらどうしようとか、展示作品は本当にこれでよかったのかとか、始まるまでは不安でいっぱいです。重圧は大きいですが、自分の思い描くように展示会が行えるという、やりがいのある仕事だと思います」

総括学芸員の桑山俊道さん。専門は工芸作品とのこと。「ぜひ親子で美術館に来てください。お子さんの鋭い美術センスに、きっと驚かされるはずです」

総括学芸員の桑山俊道さん。専門は工芸作品とのこと。「ぜひ親子で美術館に来てください。お子さんの鋭い美術センスに、きっと驚かされるはずです」

 学芸員の仕事は展示に限ったことではない。美術教育普及活動もその一つだ。「『近代美術館に置いてある作品は、難解でよく分からない』とお思いの方も多いかもしれません。一方で、有名な美術作品に対する関心は非常に高いのを感じます。もしかしたら、学校での実技を中心とする美術教育にも一因があるのかもしれません。幅広い芸術に親しんでもらい、気軽に美術館に来てもらえるように行っているのが、美術教育普及活動です」。美術に関する講演会やワークショップなどの開催、映像資料の提供といった活動をしている。特に同館では全国の美術館の中でも早くから、子供に対する美術教育普及活動を行ってきた。カードなどのツールを使ったり、ゲームや美術館探検を体験してもらったり……。さまざまな方法で、子供たちが芸術作品と触れ合うきっかけを提供してきた。同館の取り組みは他の手本となり、今では多くの美術館で工夫を凝らした子供向けの美術教育普及活動が催されるようになった。また美術教育普及は館外にもおよぶ。アウトリーチ活動と呼ばれるもので、学校や企業、公民館などの施設を訪問し、美術に対する教育や広報をする。

常設展示は作品を休ませるために、入れ替えをしながら展示を行う。作品を休ませるのは作品の保存に必要なことだそう。

常設展示は作品を休ませるために、入れ替えをしながら展示を行う。作品を休ませるのは作品の保存に必要なことだそう。

「芸術に親しみを持ってもらえるような活動が、県内に徐々に根付いてきました。教育普及活動の成果と言い切るのは難しいかもしれませんが、現在、近代美術館の活動のお手伝いをしてくださっているサポーターの方々が80名ほどおられます。20歳ぐらいの人から70代後半の人まで、幅広い年齢の方が近代美術館に愛情を持って接してくれているんです。アウトリーチ活動もサポーターの協力が欠かせません」と桑山さん。

周囲の公園内に美術作品が展示され、子供が触れたり中に入ったりできるようになっている。

周囲の公園内に美術作品が展示され、子供が触れたり中に入ったりできるようになっている。

 近代美術館のこれからについて桑山さんに聞くと、来館者や県民と一緒に作り上げる事業が将来的にできれば、との回答だった。「美術館側の思いと来館者側の思いの間にあるズレが発見できる気がします。お互いの距離が近くなることで、近代美術館の新たな姿や目指す道が見えてくるかもしれませんね」
(取材日:平成22年9月28日)

関連タグ一覧