諸々 再発見

居醒の清水・米原市醒井

居醒の清水・米原市醒井

基本情報
名称 居醒の清水
URL
文化財指定等 環境省認定「平成の名水百選」
所在地 米原市醒井58
電話番号
営業時間
定休日等
料金
※平成22年9月現在

 ~日本武尊を癒した神秘の泉~

「居醒の清水」と「蟹石」。この清水の上に加茂神社がある。

「居醒の清水」と「蟹石」。この清水の上に加茂神社がある。

 古代、中世には東山道の宿駅として、近世には中山道の61番目の宿場として栄えた米原市醒井地区。宿場風情をいまも色濃く残す醒井の町には、町筋に沿って清らかな湧水が滔々と流れている。古くから名水、名石として知られる「醒井の三水四石」のひとつ、「居醒の清水」を源とする地蔵川の流れだ。古代から現代にいたるまで、街道を行き交う旅人の喉を潤し続けてきた。
 「居醒の清水」には日本武尊にまつわる伝説があり、その水質の良さとともに周辺環境の美しさから平成20年に環境省の「平成の名水百選」に選ばれた。地蔵川の流れに身を任せながら、白色の可憐な花を咲かせる梅花藻とともに、訪れた人々の心を魅了する。
 醒井の町並みに沿って流れる地蔵川の最上流部には、加茂神社が鎮座する。「居醒の清水」は、加茂神社のたもとの石組みの下からこんこんと湧き出ている。「居醒の清水」と記された高札の下を見れば、透き通って見るからに冷たそうな水が勢いよく噴き出ているのがわかる。石灰岩質の霊仙山に浸み込んだ水が長い時間をかけて湧き出てくる「居醒の清水」は、1日およそ1.5万トンの湧出量を誇り、年間を通じて12.3~15度と夏は冷たく、冬は温かい。

居醒の清水

「居醒の清水」には、古事記や日本書紀に記された日本武尊(倭建命)にまつわる有名な話が伝わっている。第12代景行天皇の時代の話。その頃、伊吹山の山の神が悪さをするというので人々は困り果てていた。それを知った天皇は、日本武尊を山の神退治に遣わせる。最強の武器だった「草薙の剣」を持たずに悠々と退治に参じた日本武尊。途中、大蛇(古事記では白猪)に出くわしたが、これは山の神の使いが化けたものだと思い、真剣には相手にしなかった。ところが、大蛇(白猪)は山の神自身が化けたもので、このとき、山の神が降らせた大氷雨と霧に巻かれて体を壊してしまう。日本武尊はふらふらになりながらもやっとのことで伊吹山から下山して醒井にたどりつき、この清水を飲んだという(古事記では体を清水で冷やしたとある)。すると、不思議なことに目が醒めて体の具合がよくなり、その後、尾張のほうへ旅立つことができたといわれている。この言い伝えから「居醒の清水」と呼ばれるようになり、この地域の名前にも「醒井」という文字があてられるようになったとされる。

日本武尊が鞍を掛けたという「鞍掛石」や腰を掛けたという「腰掛石」などが並ぶ湧水池(上下写真とも)。

日本武尊が鞍を掛けたという「鞍掛石」や腰を掛けたという「腰掛石」などが並ぶ湧水池(上下写真とも)。

「居醒の清水」の周囲にはいくつもの湧き水の湧出口があり、清らかな水をたたえた湧水池になっている。日本武尊が伊吹山征伐の後に腰をかけて休んだとされる「腰掛石」とその際に馬の鞍を掛けたとされる「鞍掛石」は、この湧水池のなかにある。「居醒の清水」は、古くから知られる醒井の名跡「三水四石」のひとつ。「三水四石」とは、「居醒の清水」、「十王水」、「西行水」の醒井三水と、湧水池にある「蟹石」、「腰掛石」、「鞍掛石」といまは草木に埋もれているという「影向石」の四石のことを指す。「十王水」は平安時代の天台宗の高僧、浄蔵法師が開いたとされる泉。湧水池から地蔵川が流れ出してしばらくのところにある。「西行水」は地蔵川から醒井の町の一歩裏手に入ったところにある。

「三水四石」のひとつ、「十王水」。湧出口は民家の奥にある。もともとは浄蔵法師にちなんで、浄蔵水と呼ばれていたが、その昔、近くに「十王堂」があったのでこの名が付いたとされる。

「三水四石」のひとつ、「十王水」。湧出口は民家の奥にある。もともとは浄蔵法師にちなんで、浄蔵水と呼ばれていたが、その昔、近くに「十王堂」があったのでこの名が付いたとされる。

 地蔵川は幅約3m、水深50cmの小川。流域に住む人々の毎日の暮らしも、地蔵川と密接につながっている。整然とした石組みの河岸には、水を汲んだり、野菜を洗ったりできるように水際まで下りることができるところがあり、これを地元では「かわと」と呼んでいる。「かわと」では、夏になるとスイカや飲み物などが冷やされている光景がよく見られる。その昔、昭和30年代に水道が完備されるまでは、地蔵川の水は日々の飲用水としても利用されていたという。
 地蔵川が流れ出す地点の脇には、「延命地蔵堂」がある。本堂の中に安置されている鎌倉時代作の地蔵菩薩坐像は、かつて川の中に置かれていたため、「尻冷し地蔵」と呼ばれていた。総高270cm、像高234cmの花崗岩を丸彫りにした半跏像(はんかぞう)で、これだけの大きさの丸彫り地蔵尊は全国的にも希少といわれ、滋賀県下では唯一のものという。
 醒井では、「居醒の清水」を含む「醒井三水」が名高いが、「三水」を含む「醒井七湧水」と呼ばれる湧き水が周辺に点在している。醒井の町から名神高速道路のガードをくぐり、枝折川沿いを左手に進んだところにある集落、枝折地区には天神水の湧水がある。日本初の養鱒場として開業し、今はビワマスの養殖にも取り組んでいる醒井養鱒場のある上丹生地区には、いぼとり水、役の行者の斧割り水(えんのぎょうじゃのよきわりみず)、鍾乳水が湧き出る。これらを総称して、「醒井七湧水」と呼ばれている。
(取材日:平成22年9月)

関連タグ一覧