山比古湧水・愛荘町
山比古湧水・愛荘町
名称 | 山比古湧水(やまびこゆうすい) |
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URL | – |
文化財指定等 | 環境省認定「平成の名水百選」 |
所在地 | 滋賀県愛知郡愛荘町松尾寺 |
電話番号 | TEL:0749-37-8051 愛荘町秦荘観光協会 |
営業時間 | – |
定休日等 | – |
料金 | – | ※平成22年12月現在 |
~伝説残る美しい湧水~

愛知郡愛荘町に地元の山比古地蔵尊にあやかって名づけられた名水『山比古湧水』がある。鈴鹿山系の山裾、宇曽川の源流に近いところで、湖東流紋岩(秦荘石英紋岩)を通って地表に吹き出ている。古くはお伊勢参りの旅人が利用し、山仕事に携わる地元の人々によってひっそりと護られ、親しまれてきた名水だ。またこの名水には信心深い若者と山姥の伝説があり、地域に伝わる昔話として語り継がれてきた。彦根~八日市間の国道307号線から宇曽川の上流へと向かい、宇曽川ダムを過ぎてさらに山道を進むと宇曽川渓谷に到着する。そこに水が湧き出ているポイントがある。

今では宇曽川ダムが完成し、治水工事なども進んだ宇曽川流域と、地元の人々に大切にされている山比古湧水だが、江戸時代末には山がひどく荒れたことがあったという。山比古湧水の源流である秦川山一帯は「細民の米びつ」と呼ばれ、地元の人々の中にはここで薪などを採り、一家の生計を支える人が多かった。その結果山は痩せ、水は枯れ、山が著しく荒れたそうだ。2~3日の雨でも水害がでて、豪雨時の堤防決壊などの被害も多かったという。
明治時代を迎えようとしていた慶応年間(1865~1867)のこと、西川作平という人物がヒメヤシャブシの植栽を行いこれらの被害を減少させたと伝わっている。ヒメヤシャブシは空中窒素を固定する能力があり、治山植栽や肥料木などに用いられるもので、西川はこの木の植栽を30年以上続け、総本数72万本、総面積60町歩におよぶ一大事業を成し遂げた。それにより豪雨時の災害も少なくなったという。明治27年には県営の砂防工事が、明治44年から大正元年にかけては水路工の施工が行われ、自然環境を守る活動も取り組まれていく中で、緑豊かな渓谷の姿が形成されていった。
現在では1年を通じて湧き出る湧水は、誰でも気軽に水辺に来て汲むことができ、湧水ポイント周辺は山の空気を味わいながら一息つけるようなものとなっている。

湧水の向かい側にある遊歩道には伝説に登場する山姥の足跡といわれる岩がある。
『昔、大変信心深い老夫婦がこの湧水を山比古地蔵にお供えしたところ息子にとても気立てのよいお嫁さんを迎えることができた。また、その息子もこの湧水をお地蔵さんにお供えしたところ喜んだお地蔵様が「願いごとを1つかなえてやろう」といわれ、「この付近に住み着いて、村に下りてきては子供をさらい村人を苦しめている山姥を退治してほしい」とお願いし、その山姥をお地蔵様が退治し村に平和が訪れる。その若者はかわいい赤ちゃんを授かり幸せに暮らした』というお話だ。(湧水所設置の看板より)
湧水を求めて訪ねたときには、この伝説にもふれ山姥の足跡を探してみてはどうだろうか。
先人の努力と今の人々による取組で緑豊かな姿を保つ宇曽川渓谷では、鈴鹿山系の山の恵みを受ける名水と四季折々の渓谷の美しさを堪能でき、宇曽川ダムまで下れば眼下には広がる肥沃な田園の風景を眺めることができる。